漢方薬は患者の体質や病状(証)に合わせて処方する薬です。西洋薬のように病名に対して処方するのは適しません。ご相談の通り、西洋薬を漢方薬と併用する場合でも、成分や作用が重複することがあるので注意が必要になります。特に気を付けたいのは、甘草や麻黄含有の処方です。
甘草の含有成分の一つ、グリチルリチン酸には、カリウム排泄促進作用があり、血清カリウム値の低下が促進される可能性があります。摂取過多や長期服用により、血清カリウム値が低下すると、低カリウム血症や偽アルドステロン症の症候として、血圧上昇やむくみ、体重増加、脱力感、筋肉痛、痺れ、痙攣などが表れやすくなります。
甘草を含む漢方製剤との併用に気を付けなければならない代表的な西洋薬としては、利尿薬があります。
甘草含有漢方薬は非常に多く、医療用漢方製剤148処方中、109処方が該当します。よく使われる漢方エキス製剤に、芍薬甘草湯、甘麦大棗湯、炙甘草湯、小青竜湯、人参湯、半夏瀉心湯などがあります。
麻黄含有処方については、主要成分であるエフェドリンの交感神経刺激作用などにより、不眠、動悸、頻脈、発汗過多、脱力感、精神興奮、頭痛、震え、血圧上昇、排尿困難などの症候が生じやすくなります。従って他の麻黄含有製剤やエフェドリン含有製剤のほか、カテコールアミン製剤やキサンチン系製剤との併用にも注意が必要です。麻黄含有漢方薬には、麻黄湯、葛根湯、小青竜湯、麻杏甘石湯、五積散、防風通聖散などがあります。
甘草、麻黄ともに、「1日合計5gを超えないように」という指標が参考になります。ですが、この値を下回れば絶対に大丈夫というわけではなく、患者の証によって違ってきます。
なお、小柴胡湯エキス製剤については、インターフェロン製剤を投与中の患者に対して併用禁忌に指定されています。過去に間質性肺炎による死亡例が出た経緯があることから、併用注意よりも厳しい併用禁忌となっています。死亡例が出た当時、肝炎に効果のある西洋薬が少なかったため、小柴胡湯エキス製剤が肝炎の特効薬として頻用されていた背景があります。
前述の甘草も麻黄も、患者さんの証に従って処方されれば副作用の心配は減ります。しかし、最近では、いかにも一般用医薬品(OTC薬)のような名前だが実は漢方薬という薬も多く存在します。
OTC薬を販売する現場では、本当に患者の証に合った漢方エキス製剤が見立てられることは少ないのではないでしょうか。